溶接のひずみ矯正法(自己流編)
歪(ひずみ)とは
溶接とはひずみとの戦いである。
ひずみは溶接による入熱が原因で、基本的に溶接した部分が縮むと思ってもらっていい。
溶接量、溶接順番、適正な電流、電圧などひずみを少なくするために最善の努力はするのだが、それでもひずみは容赦なく発生するものである。
そして、いくら溶接の自動化や材料の機械加工などが進んでも、ひずみの矯正だけは人の技術力に頼る以外はない。
なぜなら、ひずみの算定方法などがないからである。
つまり、どのくらいひずむというのは計算では求める事が出来ないということである。
実際にやってみよう
ここに1つのブラケットがあります。
家具さんから頼まれた家具受け金物です。
この角パイプとベースプレートの取付部分でひずみが発生しました。
今回はこのひずみを矯正しようと思います。
歪の矯正前の状態
最初に歪具合を確認するために、ベースプレートに「さしがね」を当ててみました。
黄色いラインのように曲がっているのですが、ちょっとわかり辛いですかね。
さらに拡大をしました。
矢印の方に鉄板が2㍉ほど曲がっています。
どうやって元に戻すの?
基本的に、熱の膨張収縮の作用を利用します。
簡単に言うと、『溶接側に引っ張られたんで、反対側に引っ張り戻すぞ』って感じです。
まず、溶接をした裏側の黄色いライン部分を赤くなるまで加熱をします。
コツは、溶接をしたラインよりもちょっと外側を加熱すること。
矯正量にもよりますが、基本的には900度ほどまで加熱をし、火を止め600度まで空冷します。
そして、水冷に切り替えて冷却します。
ここでは、あまり熱を加えすぎると鉄の強度に問題が出ますので注意が必要です。
特別に温度を測る機械もないので全ては感です。
加熱方法も数種類ありますが、全ては感に頼るしかないのです。
さらに、冷却方法もそのまま冷やしたり、エアーをかけたり、このような感じで水が飛び散るのが嫌であれば、濡れたタオルを当てたりといろいろあります。
歪取り完了!
そして、矯正後です。
最初と同じように、「さしがね」を当ててみました。
「さしがね」がベースプレートにぴったりと付いています。
これでおしまいです。
周りは水浸しで大変な作業ですが、思ったとおりに鉄が曲がって戻ってくれれば気持ちがいいです。
以上、溶接ひずみ矯正法でした。